第4章 愛のTABOO
『…あ〜もう、分かったから! 今日の所は帰って』
「なんでですか?」
『僕にはやりたい事があって、邪魔されたくないの』
「じゃあ黙って立ってるんで見てていいですか?」
『絶対嫌だ…だから帰れ』
俺がここに居ようと粘ろうとしても、簡単に跳ね返される。意地でも動かないでいると、その人に背中を押されて呆気なく追い出されてしまった。
…まあ俺が諦めて、力を抜いてただけなんだけど。
「あ、名前…っ!」
先生の名前を聞くことを忘れて、教室の前の廊下で振り返った時には、ぴしゃりと音をたてて扉が閉められてしまった。
「ま、いいか…そのうち分かるだろ」
その日は諦めて、自分の寮に戻った。
…部活の入部申し込み期間になったら、絶対に科学研究部に入ろう。
そしてその翌日、俺は思わぬ形で彼の名前を知る事になった。
雅「ねぇ翔ちゃん、今日初めて科学室使うんだよ」
「え…科学室?」
科学室って、昨日の彼がいた部活の教室…。
だからって彼がいるとも限らないけど、変に期待してしまう。
潤「ほら移動しようぜ」
「そうだな」
俺たちは、3人で科学室へと向かった。
科学室に入ってクラスメイト達が自由に席に座っていく。俺たちもそれに倣って3人で固まって席についた。
始業のチャイムが教室中に響いた後、前の黒板の奥の準備室の扉が開いて、白衣を着た先生が現れた。
「やっぱり…あの人が科学の授業の先生か」
心の奥で、にやりと笑いながら彼に熱い視線を送った。すると隣で雅紀が不思議そうに俺をみて声を掛けてきた。
雅「翔ちゃん、あの先生の事知ってるの?」
「え? あ、いや…そこまで…名前も知らないし」
雅「なんだ、知らないの?」
潤「そういう雅は、なんか知ってんの?」
雅「もちろん、兄貴から全部聞いてるよ!」
「なにを?」
俺と潤で雅紀の言葉に、真剣に耳を傾けた。
雅「あの先生、二宮和也先生って言うんだけど…ものすごく男嫌いで有名な先生らしいよ」
二宮先生、か…てか男嫌いってのは何なんだろう。凄く気になる…。