第4章 愛のTABOO
扉を開けた先にいたのは、白衣姿の男性。
何か机に向かって集中している…。
でも、その後ろ姿はあの日屋上でみた彼と同じ。 丸めた背中から感じるその人の真剣さ…よっぽどそれが好きなんだろうな。
彼だと確信した俺は、その丸まった背中に向かって声を掛けた。
「あの、部活見学に来たんですけど…先生とかっていますか?」
不思議な事にこの教室には、彼1人しかいない…てことは、先生がサボっているとしか考えられない。
そもそもこの部活って、この人だけでやってんのかな。
そう考えていた時に、その彼が振り返った。あの綺麗な顔が見られるなんて思って一瞬肩をビクつかせた俺が見たのは…。
『君、誰…?』
「え、あんたこそ誰…」
彼から問いかけられた質問に、咄嗟に口がそう言っていた。
だってこの人、俺の知ってる屋上にいたあの人じゃない。 なんか意味のわからない分厚い瓶底メガネみたいなのかけてるし…。
もさい男なんて求めてなかったんだけど。
『ああ、君部活見学に来た子…だったら出てってくれる?』
「はぁ? ここ部活してるんじゃないんですか?」
『してるはしてるけど…幽霊部活みたいなもんだから』
「なんすかそれ」
『存在してるはしてるけど、実際活動なんてしてないの』
「そういう事…で、あんたは誰なんすか?」
『僕はこの科学研究部の顧問だけど…それが何?』
か、感じ悪…っ、こんなのが顧問?
という事はこの学校の先生って事だよな…。こんなのが先生やってて大丈夫なのかよ。
でも、この人のさっきの後ろ姿は絶対にあの人なんだよ…。そうだ、この人がメガネを取ったらそうなんじゃないか?
「先生、ちょっとすみません」
『は、なにするんだ…っ!?』
「やっぱり…!」
俺は先生の分厚い瓶底メガネを取って奪った。
その顔はやっぱりあの日屋上でみた美しい彼の顔…。
この人がここの先生…。
「決めました、俺この部活に入部します」
『な、に言ってんだよ…ここに部員なんて要らないんだよ!』
「それでも入りますよ、俺アンタの事気に入ったんで」
『なんじゃそりゃ…お前頭大丈夫か?』
「ええ、いつも通り冷静ですよ?」
俺は、先生にそう微笑みかけた。
メガネを外した彼は、その大きなブラウンの瞳をきょろきょろさせて動揺している…なんだか小動物みたいで可愛い。