第4章 愛のTABOO
その日のオリエンテーションが全て終わり、3人で寮の部屋に戻っている時だった。
雅「やっぱり大野先生、綺麗だったな〜♪」
潤「ああ、男に興味なんてなかったけど、あんな人見たら興味ないなんて無理だよな」
そこでもやっぱり2人は、担任の大野先生の話題で盛り上がっていた。
雅「翔ちゃんも綺麗だって思ったでしょ?」
「うん、まあな」
雅紀から投げかけられた質問に曖昧に頷く。
…正直、そこまでうっとりする程俺は、彼に魅力を感じなかった。
確かに綺麗で、美しいっていう言葉が似合う人だとは感じたけど…皆が言うように欲情するまでじゃない。ただ本当に綺麗だなって感じるくらいしか…。
てか、そもそも男に欲情なんてしないんだ。
俺は一方的に男に襲われるってだけで、自分が自ら男に飛び込んでみようなんて思った事は1度もない。
「ごめん、俺ちょっと外に行ってくるわ」
雅「あーうん いってらっしゃい〜」
潤「気をつけろよ〜」
暫く夕陽の綺麗な時間に、外に出て落ち着きたかった。
俺は1人で静かになれる場所を探して、校舎の屋上へ向かう事にした。 屋上へ続く扉を開けた時、何処からか綺麗な声の鼻歌が聞こえてきた。
その声のする方を耳で辿って、目線を上に向けた。そしたら、給水タンクの上に人影が見えた。
儚げに紡がれる歌声を邪魔しないように、そっとその人が見える位置まで動いた。
その人の顔をみた瞬間、今まで抱いたことのないような感情が俺の心の中で暴れだしだ。
風にふわふわと揺れる少し無造作に切られた黒い髪…
前髪の隙間から覗く、夕陽にあてられて輝くブラウンの瞳…
透き通るような白い肌…
そして彼は、白衣を身にまとっていた。
「あの〜」
俺はその人に声を掛けてみた。
大野先生より何故かこの人に凄く興味がそそられる。
俺の声に気が付いたその人は、俺を見ると右手の人差し指を口に当てて、あっという間にその場を去ってしまった。
「秘密って事か…? 一体誰だったんだろう」
その日から俺と、彼の運命の歯車は動き始めていた。