第4章 愛のTABOO
大分年季の入ったアンティークな体育館に、今年の新入生が一堂に会した。
在校生による校歌斉唱を聞き、校長の長い話を聞く。その後には俺の出番が待っている。
『新入生代表、櫻井翔』
「はい」
体育館内に響くマイクの声から、俺の名が呼ばれる。
雅「やっぱり翔ちゃんだったんだね」
潤「当たり前だろ」
俺の隣で雅紀と潤が、俺にエールを送ってくれる。それに励まされながら事前に貰っていた紙を開き、全校生徒の前で長々と読んだ。
式も終盤に差し掛かり、朝廊下に貼り出されていたクラス分けの紙のクラスの担任が発表される時間になった。
例の如く、俺たち3人は一緒のクラス。
…もうここまで来たら運命としか言いようがない。
俺たちのクラスが集まる場所に、1人の男性教師が立った。
その時、隣で雅紀が1人歓声をあげていた。
「知ってるのか?」
雅「うん! 兄貴が言ってたんだよ、あの人ここの学校の1番の美人教師だって」
潤「確かに…男にしては綺麗だよな」
雅「でしょ! 学校のヴィーナスだって皆言ってるよ!」
「ヴィーナス…」
『女神』か…確かに男の人なのに綺麗な顔だな。
あんな顔しててこんな所にいたら、それこそ俺より頻繁に男に言い寄られていそうだ。
その場でその教師の名前は明かされなかった。
そしてその先生の誘導の元、教室に移動した。
予め指定されていた席に着くと、黒板の前にヴィーナスの担任が立つ。
『これから皆さんの担任になる大野智です』
雅「うわぁ…めっちゃ綺麗な声」
ヴィーナスの名に相応しいような、美しい美声と落ち着いた優しい雰囲気の先生。
智「僕は美術を専攻しています、皆の美術の授業も僕が教えますよ?」
潤「美術なんて嫌いだったけど、今年は楽しみだな」
雅紀に続いて、潤まであの人の虜になっている。
智「皆は今年入ったばかりで何も分からないでしょう…1から教えて行くので、気軽に接して下さいね」
そう言って彼が微笑んだ瞬間、教室中が一気に彼の虜になったような気がした。ただ一人、俺だけを除いて…。