第3章 禁断の果実
潤「仕事が終わったら来てくれますよね…?」
俺に有無を言わせないような潤さんの
真剣な眼差し。
そんな顔されたら、断れなくなるだろ…。
「…お、お邪魔しても良いのなら」
潤「もちろんですよ…じゃあマンションの前まで
一緒に行きましょうか」
「あ、待ってください…!」
今月末の事を考えていたら、なんだか頭が
ぼうっとして、先に行く潤さんの背中を慌てて追った。
マンションから走って来たけど、そんなに
遠くまで行ってなかったんだな。
歩いて5分ほどで着いてしまった。
潤「今日はこれでお別れですね…」
「あ、あの…!」
ずっと言えなかった事、はやく言わなきゃ。
潤「どうかしたんですか?」
「きょ、今日は…その、ありがとうございました」
潤「ああ、さっきの」
「はい、ちゃんと素直に言えなかったから…」
潤「お礼なんて良いのに…俺はただ、好きな人が
嫌がってたから助けただけですよ」
「そ、んな恥ずかしい…です」
俺が顔を伏せてそう言ったら、頭の上に
潤さんの優しい手が触れた。
潤「可愛いです…月末会うの楽しみにしてますね」
「ぅ、あ…はい」
そう言って離れた手を目で見送った。
俺は車に乗り込んで深い溜め息を吐く。
俺は、か弱い乙女か…。
なんだよあれ…潤さんといると全然俺らしくない。
か、可愛いとか言われて照れるなんて。
これが好きって事なのかな。
ふと潤さんの部屋の階を見上げた。
あ、部屋に入るのか。
ドアを開けて潤さんが中に入ろうとすると
部屋の中から女性が飛び出してきた。
「あれが、奥さん…か」
その瞬間さっきまで俺と繋がっていた唇が
その人と触れ合った。
ズキズキと心臓が握り締められるみたいに痛む。
潤さんは、その人に向かって微笑んでる。
俺に向けてくれた笑顔で…。
ねぇ、潤さん…貴方は俺のものだって思っても良いんですよね?