第3章 禁断の果実
「…ん、ぅ、っく、ふ、んっ」
唇と唇を食んでいたそれは、段々と
舌を絡め始めた。
俺はこんな濃厚なキスをした事がないから
全て松本さんに任せてしまっているけど。
…やっぱり松本さんは、経験豊富なんだろうな。
松本さんの熱い舌が、俺の舌を追いかけて
搦めとって離さなくしてしまう。
「ん、んっ、は、ぁ…っ、」
それから逃れられたかと思えば、
今度は顔の角度を変えて、追い立てられる。
お互いの舌を搦めていれば、そこに唾液が
生まれて…。
「…は、ぁ、ぁ…っ、ん、あ」
くちゅくちゅと、淫らな水音を響かせて
俺たちの口の中を出入りする。
徐々にそれが、その行為が…身体を
繋げているかのようなものになってくる。
松本さんの舌が俺の口の中を犯すように
抜き挿しを繰り返して、俺はそれを甘く受け入れる。
「ん、あ、は、んっ、ぅ、ん」
俺が松本さんの舌を追いかけて、搦めようと
すれば弄ぶように逃げられてしまう。
「ん、く、ぅ…は、ぅ」
追いかけては、追いかけられて…。
そんなやり取りだけをずっと続けていた。
口から溢れた松本さんのか、俺のか分からない
唾液をだらだらと垂れ流しながら。
それすらも気にならないほどお互いだけを
求め合っていた。
「…んは、ぁっ」
長い長いキスの甘いひと時から、
ゆっくりと現実に引き戻される。
「松本さん…っ、」
潤「2人の時は名前で呼びませんか?」
「名前…」
潤「はい、大野さんの下の名前を教えてください」
「さとし…智です」
潤「智、これからはそう呼びます」
「あ、俺はなんて呼べば…」
潤「潤でお願いします」
「潤、さん…」
俺はまだ、呼び捨てにする事が恥ずかしくて
さんを付けてしまった。
…まあ、これから慣れていけばいっか。
「潤さん、次はいつ会えますか…?」
潤「…あ、じゃあ今月の月末俺の家に来てくれますか?」
「え…っ?」
驚いた俺に潤さんは、追い討ちをかけるように
耳元で囁いた。
潤「その日、妻が旅行で帰って来ないんです…」
「…っ、」
そ、れって…。