第3章 禁断の果実
【 Satoshi 】
松本さんに予告のような告白を受けてから
約1週間。
この日も俺は仕事に追われていた。
「これで最後か…」
今日は松本さんの家に配達に行かないのか。
「…って、なんで残念がってんだよ俺」
気を取り直して、俺は路肩に車を止め
配達物を持ち上げて家のインターホンを押しに行く。
客『はい』
「配達に来ました〜」
インターホンから男の野太い声が聞こえて
簡単に説明する。
すると数分後、ドアが開いた。
「お届けものです…サインお願いします」
客の男に紙とボールペンを渡してサインをもらう。
…そういや、松本さんの字すっげぇ綺麗だったな。
それに、男の人にしては綺麗な顔だし
低すぎず高すぎないとても美しい声だった。
俺、なんでこんなにも松本さんの事
考えてるんだろ。
会いたい、とか思ってたりすんのかな。
客『おい、ちょっと聞いてんの?』
「え、なんでしょう?」
客『書けたんだけど』
「あ、すいません…」
乱暴に渡された紙を受け取った。
ダメだダメだ、今は仕事中なんだから。
「それじゃあ失礼します」
軽くお辞儀をしてその場を後にしようと
客に背を向けた時。
客『待てよ、アンタ』
客の男に手首を掴まれた。
何事かと男を振り返ると、嫌な笑顔を浮かべて
俺を下から上まで舐めるように見ていた。
まずい、こいつの目…いかれてやがる。
「なにか…?」
客『アンタ仕事中にボケっとしてたよな?』
「そ、れは…すいません」
客『だったらサービスくらいしてけや』
「なっ…!」
その男の手が、俺の手首にぎりぎりと
食い込むように握られる。
「いや、ちょっと…まだ仕事中なんで」
客『そんなの関係ねぇだろ、な?』
「や、めろ…っ、」
手首を引っ張られて、そんなに力のない
俺はずるずるとそいつの方へと引き寄せられる。
客『アンタ男の割に綺麗な顔してるよな…』
「ぅ、離せよっ…!」
どれだけ力を込めて振り払おうとしたって
力じゃ敵わない。
…お願い、誰か助けてくれっ。