第3章 禁断の果実
【 Jun 】
ドアをゆっくりと閉めて、俺は受け取ったものを
手に玄関でうずくまった。
「はぁ…」
…俺、なんであんな事言っちゃったんだろう。
『好きになってもいいか』なんて、会って
間もない奴に言われたら大野さんのような
態度をとるのが当たり前だろう。
俺は一体何をしたかったのか。
確かに初めて会ったあの時からずっと
彼の事が気になって仕方なかった。
あの日から今日まで、何をしていても
彼の事が頭から離れなかった。
どんな顔で笑うんだろう…。
どんな声で話すんだろう…。
どんな事が好きなんだろう…。
仕事中も家に帰って妻と話していても
ずっとその事ばかりが頭を巡回する。
そう思っていた時に、彼が来た。
そしたらもう、止まらなくなって。
彼の顔を見たら、彼の声を聞いたら…。
「でももう、この思いは胸の奥に閉じ込めなくちゃな」
俺は密かにそう決意して、前を向くことにした。
その1週間後、この日俺は休日だったのにも
関わらず会社でのトラブルが起きた為に
そのカバーで仕事をしていた。
その帰り道。
少し離れた場所に見覚えのある車が止まった。
確かあれは…。
目を凝らして見てみれば、その車から下りてきたのは
「大野さん…」
大きめの荷物を持った大野さんだった。
大野さんは、荷物を持って大きな一軒家に
入っていく。
「待っていても良いかな…」
悪いとは思いながらも、俺は車の側で
待たせてもらうことにした。
少しだけでもいいから彼の声が聞きたい。
そう思って車の側に立ちながら、スマホを
いじっていた。
「…長引いているのか」
自分の家に配達に来てくれていた時よりも
大分長い時間が掛かっている。
心配になって、そっとその一軒家の敷地内に
足を踏み入れた。