第3章 禁断の果実
「いやいや、駄目っすよ!」
潤「どうして…?」
松本さんは、とても不思議そうに
首を傾げた。
この人見た目が凄く整っているから、
てっきり中身もしっかりしてる人だと思ってた。
けどこんなに天然だったなんて。
一体どこから突っ込んでいいのやら。
「だってそれ、立派な浮気ですよ?」
潤「俺の片思いです、別に大野さんに
受け入れてもらおうなんて思ってません…ただ
この恋心を認めてもらいたいだけなんです」
そう言う彼の目は真剣そのものだった。
想いを認めるだけなら…なんて甘い考えに
至りそうになって、首を横に振った。
「駄目です、ちゃんと奥さんを思って下さい」
潤「そうなるのが普通ですよね…」
「当たり前ですよ」
潤「じゃあ、俺のこんな想いを知っても
また宅配に来てくれますか?」
「そ、そりゃ…仕事っすから」
潤「そうですか、また来るのを楽しみにしてますよ」
「はあ…」
そう言われて、ドアは閉められた。
俺は被っていた帽子を取り、頭を掻いた。
やべぇ、まさかあんな奴だなんて
思いもしなかった。
くそ、頭がめちゃくちゃ混乱するじゃねぇか。
「あ〜、煙草吸いてぇ…」
俺は急いで車に戻り、煙草を咥えて火をつけた。
俺の荒れた心をすぅっと、煙が落ち着かせていく。
…にしても俺はあの人にどんな顔をして会えばいいのか。
車の窓を開けて、松本さんが住む
高層マンションを見上げる。
あんなきっちりした家に住んだ
既婚者をどんな目で見ればいいんだよ…。
たとえそれがこの今の時代に政略結婚の相手と
結婚した哀れな男だとしても。
相葉に相談するか…。
いや、止めておこう…俺と松本さんの問題だし。
あの人だって直ぐに俺なんかに
魅力なんてないんだって気付くだろ。
そうだ、そうなればいいんだ。
そうなってもらわなくては困る…。
今度は俺がどうにかなりそうだ。