第1章 嫉妬狂乱
「あのね、その…」
翔「なんでも聞くから、ちゃんと言って?」
もごもごと言い淀む俺に翔さんは、
優しく手を差し伸べてくれた。
そんな優しい翔さんに、このお願いは
ずるいかもしれない…。
けど俺は、どんな手を使ってでも
自分を守りたかったんだ。
「智の誕生日のその日まで、俺のそばに
いてくれませんか…?」
翔「ニノ…」
「あ、あの時は…その、今日だけなんて
言っちゃったけど翔さんが必要なら抱いてもいい
…だからお願い、俺のそばにいて…」
最後は小声になっちゃったけど、
翔さんにはちゃんと思いを伝えられた。
智の誕生日まで、まだ1週間くらいある。
その間だけでも翔さんにそばにいて欲しい。
智じゃなくて、優しい翔さんのそばにいたい。
翔「誕生日までで良いの? もっと長くそばに
いても良いのに」
「ううん、その日まで…あとはちゃんと自分で
どうにかする」
翔「分かったよ、ニノが望むならなんでもするよ」
「ありがとう…」
この1週間の間で、智と俺の関係が劇的に
変わるとは到底思えない。
でも、誕生日当日までになにも起こらなかったら
俺はきっぱり智を諦めるつもりでいた。
ここまで思ってるのに、これ以上先に
進めないんじゃもう何も価値がないから。
こんな思いを持っていても。
「翔さん、誕生会が過ぎて…もし俺の心が
変わったら…その時は、受け入れてくれる?」
翔「ああ、いつでも待ってるよ」
俺はずるい、卑怯だ。
翔さんに期待を持たせて起きながら、
もしも智からなにかアプローチがあれば簡単に
そっちへ行く覚悟でこんな事を言っているんだから。
でももう、それしか方法がないんだ。
ごめんね…翔さん。