第1章 嫉妬狂乱
そう思った時には、身体が勝手に動いてた。
翔「…かず?」
俺は寝室を抜け出して、慣れないキッチンに
立つ翔さんの大きな背中に身体を預けた。
翔「かず、ちゃんと休んでおかないと…」
「ごめんね、ちょっとだけ…」
翔さんのシャツをぎゅっと握り締めて
背中から聞こえる翔さんの鼓動に耳を傾けていた。
どくん、どくん…。
規則正しく動いてる翔さんの心臓。
力強くて、大きくて、温かい。
翔「身体、冷えるだろ?」
「うん、ベッド戻るね…」
そっと翔さんの背中から手を離して
戻ろうとしたら、手首を掴まれた。
そして、優しく腕の中に閉じ込められる。
翔「ほら、こんなにも冷えてる」
「うん」
翔「はぁ…智くんなんて諦めて、俺の所に
来れば良いのに…それじゃ駄目か?」
「…うん」
本当は少しだけ翔さんに、心が揺れたよ。
でも、どんなに辛くても俺には智だけなんだ…。
翔「そうか、そういう奴だもんな」
「うん」
筋肉質な翔さんの腕の中で、俺はただ
頷いていた。
翔さんの身体に腕を回すこともなく、
ただ頷くだけ。
翔「うん以外言えない?」
「…ううん」
翔「埒があかないよ…」
そう言って翔さんは、溜息をついた。
けど、諦めたように笑ったんだ。
いつもの笑顔で。
翔「あ、そうだ…ニノに言わなきゃいけない事が」
「なに?」
翔「来週、智くんの誕生日だろ?メンバー
全員で智くん家でパーティするんだって」
「あ、そうなの…」
メンバー全員で、智の家に…。
今の状態でそんな状況に耐えられるだろうか。
翔「大丈夫か?」
「っ、翔さん、お願いがあるの」
翔「ん…?」
俺は顔を上げて願いを口にした。