第1章 ORIGINAL COLOR①
わたしと堂本剛の高校時代の思い出はたったこれだけ。
どこかへ遊びに行ったことも、部活で一緒に汗水流して
頑張った思い出もなにもない。
たった5分程度の会話を、2、3回しただけだ。
だから正直彼についてよく知っているかといえばそうではない。
家族構成も知らないし、今バイトなにしてるかとか、将来なにになりたいだとか、好きな子はいるのか、そんなことだってなにも知らないのだ。もしかしたら彼女だっているかもしれない。
たまに呼び出されて会いに行くのはわたしの方で、わたしから誘ったことは一度もない。
なんとなくいけないことのような気がしてわたしから連絡はできないのだ。
放課後─
講義が終わって、わたしは堂本剛に呼び出された吉祥寺のくぐつ草という喫茶店に向かった。
地下にあるこのカフェはタバコが吸えて、照明も暗く、秘密の会議をするにはうってつけなのだ。
彼に会うときは必ずこの喫茶店を指定される。