第5章 ORGINAL COLOR⑤
剛の住んでいるアパートは、井の頭公園と吉祥寺のちょうど境目あたりにあった。
外見は少し古ぼけていたが、扉を開けた瞬間驚いた。
とても普通のアパートに見えない程オシャレなのである。
水槽がいくつかあって、見たことのない魚が泳いでいる。
「すごい!!お店みたいにオシャレ!!!」
「うん。ありがとう。DIYに凝ってるんよ。」
剛は少し恥ずかしそうに笑いながら下を向く。その姿がなんとも愛らしく可愛かった。
剛と付き合い始めて1週間、わたしは彼に驚かされてばかりだった。
まず、意外と甘えん坊だということ。
今までの彼はとてもクールで不思議な男の子だった。
何を考えているかわからなくて底知れない。
浅はかな発言をしたら軽蔑されてしまうのではないかなんて怖がっていたりした。
しかし、付き合ってみるとまるで別人みたいな彼が出てきたのである。
底知れない感じは確かにあるのだが、寂しがり屋で会ったらとても甘えてくる。
そしてわたしのことをとても好きでいてくれているということ。
付き合っているのだから当たり前かもしれないが、わたしにとって一番意外なところだった。
付き合うことが決まったときでさえ、わたしは疑ったりしてしまったが、言葉の端々でわたしのことを好きでいてくれているんだと分かる。
「このベンチみたいなのもすごく可愛い。」
見たことのない形に色とりどりの絵の具で雑に塗られているが、それがとてもオシャレだった。
「うん。なんかベンチ欲しいなー、思って、島忠で適当に材料買って作った。」
「すごいね。座っていい?」
「うん。ええで。」
わたしが腰掛けると、剛は机に置いてあった一眼をおもむろに手にしてわたしの顔をパシャリと写した。
「すまん。なんとなく。なんか俺パー子みたいやな。」
びっくりしたが、彼の考えがなんとなく分かってきた。
彼の中には創作意欲が常に溢れまくっているのだ。
なにか作りたい。
なにか残したい。
これを作品にしたい。
思った瞬間に道具を手にして、思った瞬間に作品にし始めるのだ。