第5章 ORGINAL COLOR⑤
放課後──
改札を出てわたしは小走りで駅を出た。
少し走っただけなのに、いつもより呼吸が荒くなっている気がする。
待ち合わせ場所のサーティーワンアイスクリームの前に行くと、剛らしき人を見つける。
いつもみたいにカラフルで個性的な洋服はなくて、ジーパンに黒いパーカーに黒いキャップで、なんだか普通の男の子みたいな格好をしていた。
わたしは剛に気づかれる前に小走りにしていた足を止め、呼吸を整え、風になびかれた髪を急いで直した。
沢山の人混みに混じっているはずなのに、なぜか彼だけは輝いて見える気がする。
こんなに遠くにいるにいるのに、ポケットに手を突っ込んでたまに足で地面を蹴ったりする彼の姿がとっても綺麗で絵になっていて、惚れ惚れした。
嵐のように去っていく人混みの中堂本剛だけはスローモーションで動いているようだ。
しばらくぼーっと彼に見惚れていると、堂本剛はパッとこちらに顔を向ける。
すると、深刻そうに見えた彼の顔が一気に緩み、砕け、ふにゃりとした笑顔を向けてくれた。
わたしはそれだけて何かが込み上げてきて胸がいっぱいになる。
「ひろかさ〜ん!」
剛は周りの目なんか一切気にすることはなく、大きな声でわたしの名前を呼んで腕を振った。
通り過ぎようとしていた人達は少しだけチラリとこちらに目線を移していた。
ちょっとだけ恥ずかしくなったが、優越感や嬉しさの方がうわまわったので、わたしはまた小走りで彼に駆け寄った。
「ごめんね。待った?」
「ううん。全然待ってへんよ。それにひろかさんを待ってる時間すごく楽しかったし。」
ニッコリと屈託のない笑顔でそうな風に言われてわたしはなんと言い返したら良いか分からなくなってしまう。
「うん。」
ほんとはもっともっと可愛く返したかったのにわたしはそれだけ言って下を向いて黙ってしまう。
「わたしも会えるの楽しみでワクワクした」「すごく嬉しい、ありがとう」「え〜、もう恥ずかしよ〜」
頭の中では可愛い言葉が出でくるのに、喉が詰まったみたいに声に出なかった。