第5章 ORGINAL COLOR⑤
剛はわたしの可愛げのない反応を気にすることなく、優しい笑顔をこちらに向けている。
こうやって普通に話すのだけでわたしは精一杯なのに、彼にはどこが余裕があるように見える。
「少し巻いてる?髪。」
そんな風に顔を覗き込んでくる彼の目線から逃げるようにわたしは目を逸らしてしまった。
「、、、あ、うん。」
「やっぱり。めっちゃ可愛い!」
素直に受け止めれば良いのに、なんだか気を遣わせてしまったのかなあ。なんて思いが頭をよぎってしまう。
「ありがとう。」
堂本剛はわたしの考えを見透かしたのか、少しだけ困ったように笑いながら、右手を差し出してきた。
「じゃあ行こうか。」
一瞬どういう意味か分からなかったが、すぐに手を繋ぐんだと分かって、少しだけ戸惑った。
「はい、ひろかさん手出して。」
躊躇しているわたしを気遣ってそう言ってくれる。
「うん。」
わたしは遠慮がちに差し出すと、剛はぎゅっと強く私の左手を力強く握ってくれた。
暖かい体温が左手にじんわりと伝わって、少しだけホッとした。うまく喋れなくてもこうやってどこかが触れていると、通じ合える気がする。
「ひろかさん手冷たいな。もう冷え性?」
「そうなの。この季節から冷えちゃって困っちゃう。」
「そうなんや。めっちゃ可愛い。」
え??
わたしはびっくりしたように彼を見ると、堂本剛は吹き出すように笑った。
「なんかもうあかんなー。全部可愛いわ。」
「もー、なにそれー。」
「ほんまやって。めっちゃ可愛い。」
彼のトリッキーな言葉のやりとりについていけず困ってしまう。
「ひろかさんお腹減った?」
「うーん。そこまで。でも食べようと思えば食べれるって感じかな。」
「そっか。まあ時間も中途半端やしな。まだ夕飯はいっか。」
「うん。」
「昼は何食べたん?」
「え、昼ごはん?えっと、カレー。」
「カレーか。めっちゃ可愛い。」
え??
また同じようにびっくりと彼を見ると、また同じようにケラケラと笑って、
「ごめん!!もう止まらん!黙るわ。」
と言っている。訳が分からない反応だけど、なんだか嬉しくなってしまった。