第1章 ORIGINAL COLOR①
ぼんやりと隣の様子を眺めていると、ポケットのバイブがブーと鳴った。
わたしは急いでスマホを取り出し、教授に見つからないように机に隠して確認する。
ラインが一件入っており、想像通り、相手は堂本剛からだった。
わたしは心臓が大きくドクンと高鳴るのが分かる。
でもそれは嬉しさからではない。
嬉しさを超えて、不安な気持ちがするのだ。
ドキドキする気持ちを抑えながらラインを開くと
「今日18時ころ吉祥寺のいつものカフェでええか?」
と入っていた。
わたしはすぐさま震える手で
「うん。分かった。了解です。」
と送る。
また始まるらしい。
この季節の恒例行事が。
彼に会える喜びと、
彼がなにを考えているか分からない不安と、
わたしの中にある知らないわたしを覗かれる羞恥心と、
選ばれている優越感と、
彼と自分にある落差を目の当たりにする悲しみなど、
さまざまな感情が押し寄せて、飲み込まれる。
それでも最後には、やっぱり彼に会えるのが嬉しい。
わたしは
彼、堂本剛が好きらしい。
好きで好きでたまらないらしいのだ。