第1章 ORIGINAL COLOR①
今年も学園祭の季節がやってきたらしい。
教授の催眠術のような講義を右から左に流しながら、わたしは窓際の席で、隣の校舎をぼんやり眺めている。
トランペットの「プーパー」という情けない音
演劇サークルの威勢の良い発声練習
ボロボロのツナギを着て、ペンキで大きく絵を描く者
いろんなカラフルな景色が目や耳に飛び込んできて、
わたしは内心ドキドキしていた。
秋の気温はなんだか切なく心地が良い。
夏が過ぎ去ってグンと気温は下がったが、まだまだ太陽の光は強く、ちょうどいい温度で少しだけワクワクもする。
それは気温のせいだけなのだろうか…。
わたしが通う南社会大学は偏差値中の中で、特にこれといった個性もない、超普通の大学。
そして、南社会大学から道を一つ挟んだ真隣には総合アート大学という、特殊で、超倍率が高い有名大学がある。
この大学は様々なアートなことを一気に学べる大学で、例えば映画や音楽、美術やファッションなど、自分の興味のある分野を2〜3個選択できるというなんとも贅沢な大学なのだ。
この季節になると、隣の校舎はとても賑わう。
学園祭に一番力を入れているらしく、恐らく日本でトップクラスにお客さんが集まるのだ。
総合アート大学を目指している高校生はもちろんのこと、近所の人、他大生、将来活躍するであろうアーティストを発掘する為に、有名なプロデューサーや、雑誌の取材なんかもはいる。
だから、誰かの目に止まってもらう為にみんな必死にアート活動をするのだ。
一方うちの大学は超質素で、南社会大生すら、いつ文化祭をやっているのか分からないほどである。
そしてうちの学生もまた、学祭の季節は隣の大学に遊びに行ってしまう。