第4章 ORIGINAL COLOR④
外を見るとだいぶ日が傾いてきたので、そろそろ帰ろうと椅子から立ち上がると、なにやら外から騒がしい声が聞こえてきた。
2、3人の女子生徒の「きゃーきゃー」という黄色い悲鳴のような声だった。
ゼミ室の扉を開けて外の様子を確認すると、
目の前の廊下を女子生徒が走り抜けていく。
その瞬間聞こえてきたのが、
「堂本剛くんきてるって!!」
「え、嘘!!」
「どこどこ?」
「やばい!!」
わたしは驚きと同時にまさかと思った。
女子生徒が見えなくなった瞬間、
「やっと見つけた。」
という低くてあったかい落ち着く声が耳に届いた。
本能で、胸の奥がキュッと締め付けられるのが分かる。
堂本剛だった。
「なんで?」
わたしは震える声を抑えながらそれだけ言うと、
彼はいつもの優しい笑みをこぼす。
「なんでってことないやろ。一つ一つ教室回って探したんやで。」
廊下でそう話していると、また女子生徒の騒がしい声が聞こえてきた。
「やばっ。」
剛はその瞬間、わたしの腕を掴んでゼミ室に入れて、教室の鍵をガチャリと締めてしまった。
教室に二人きりになり、緊張感と静寂が部屋の中に充満する。
窓の外で打ちつける雨音だけが妙に耳に残った。
「避けてるやろ。」
真っ直ぐこちらを見つめながら言う彼にドキドキしながらわたしは目を逸らす。
「そんなことないよ、、、。本当に忙しかっただけ。」
わたしの言葉はセリフめいていて、台本を読んでいるようだ。
「嘘。こんな風に少しも会えないなんてことなかったもん。なんかあったんやろ?」
少しずつ近づきながらそう言う彼に嘘がつけなくて、声が小さくなっていくのが分かる。
「、、、なんにもない、、、。」
壁のところまで迫られて、わたしは身動きが取れなくなってしまった。
剛は手を壁につけ、さらに逃げられないようにわたしを覆う。
「ほんまに?」
目の前に剛の顔があり、顔が赤くなっていくのがわかる。
心臓が飛び出しそうになった。