第4章 ORIGINAL COLOR④
「じゃあ、ひろかさんはあっこから走ってきて、この辺でジャンプして。」
「え?え?ジャンプ?」
突然の提案に戸惑っていると、
「はよはよ!」
とお菓子をねだる子供のように剛は笑いながらわたしを急かした。
「うん。分かったあ。」
わたしは何がなんだか分からないまま、言われた通りに遠くまで行って、走ってそれからジャンプをする。
すると、シャッターを切っていた剛はケラケラと笑いだした。
「ちょっとひろかさ〜ん!真剣に頼むわ!」
「え?真剣にやったよ!なんで?」
わたしは彼の持っていた一眼を覗き込むと、全然ジャンプできてなく、ほんの少ししか宙に浮かんでなかった。
「えー!ちゃんと撮ったー?わたしもっと飛んだよ?」
「嘘やって。俺だって一番高いとこで撮ったもん。」
「嘘ー!じゃあもう一回撮ってー。」
「頼むわ。」
わたしはもう一度同じように走ってジャンプしてみせるが、結果は同じで彼の「アート写真っぽいもの」はなかなか撮れない。
「なんでこうなんねん!」
剛はツボに入ったらしく、カメラを首にぶら下げながらずっと笑っている。
わたしは悔しくなって彼のぶら下げているカメラを奪い取る。
「え?なんやねん。」
「結構難しいんだからね。はい。次堂本くん。」
「え?え?」
びっくりしている彼の背中をわたしは強引に押し出す。
「わたし撮ってあげるから堂本くん見本見せてよ。」
挑発するようにそう言うと、理解したのか、剛はニコリと笑った。
「分かった。見本見せたるわ。」
そういう剛はタタタと駆け出し、遠くまで行くと、
「行くでーー!!」
と大きな声を出してそう言う。周りにいた人達はその声に反応し、チラチラとこちらを見ていた。
彼にとって周りの目なんか関係ないらしい。
いつも気にしてしまうわたしも、なぜか彼と一緒だと気にならなかった。