第4章 ORIGINAL COLOR④
ページをめくるごとに、当時の記憶が鮮明に蘇ってくるのがわかった。
2年前。撮影当日──
吉祥寺にある井の頭公園は紅葉の季節で、木々は赤や黄色に姿を変えている。
ポカポカとした撮影日和で時々頬を掠めるそよ風が気持ちよかった。
「緊張解けてきた?」
「ううん。全然慣れないよ。やっぱりわたしモデルは向いてないと思う。」
ファインダーを覗きながらふふふを彼は優しく笑う。
「向いてるか向いてへんかは、俺が決めることやから。ひろかさんは自然にしてるだけで良いから。」
「もう。それが一番難しいのにー。」
そう頬を膨らませると、パシャとシャッターを切り、
「ちょっとやめてよー。」
と笑うとまたパシャとシャッターを切った。
わたしは彼のいたずらなアート活動にため息をつく。
その時、彼の思いのままにしようと決めたんだ。
自然で良いという言葉が何となく分かった気がした。
彼は綺麗な写真を撮りたい訳ではないんだ。
キメよう。
良い写真にしよう。
良いモデルになろう。
という考えは捨てて、彼との時間をただ楽しもうと思った。
「ひろかさんのコンプレックス教えてや。」
剛はファインダーを真剣に覗きながらさらっとそう言った。
わたしはドキリとする。
彼は人の内面を自然に引き出すのがとても上手い。
「えーっとねえ、、、。」
ドキドキしながら考えている最中も、シャッターを切る手を止めようとしない。
わたしの戸惑う指先や足先や、黒目の動きを彼は逃そうとせず一つ一つカメラに収めていく。
「まず太ももかなあ。冬になっていくと、太くなっちゃって困る。なかなか肉も落ちないし、永遠の悩み。」
「他は?」
わたしが誤魔化すように笑って答えると、そんなんじゃ許さないというようにまた問い詰める。
わたしは素っ裸になっていく感覚がした。
彼の前では嘘はつけない。
心の中の中までそのカメラに写ってしまっているんだ。