第4章 ORIGINAL COLOR④
それから堂本剛とのやりとりは数日続いた。
少しでも会いたいという彼からの誘いをわたしはことごとくはねのけ、思っていない冷たい言葉を送り続ける。
わたしはなにをしているんだろう。
こんなことに意味なんてあるのかなあ?
わたしは堂本剛のためだと思ってこんな行動をしているが、間違っているのかなあ?
でもこれしかなかったんだ。
彼を守り抜く方法は。
わたしみたいな平凡な女と噂される彼をわたしはどうしても見たくなかったから。
数日後──
わたしは放課後ゼミ室で、一人ぼーっと考え事をしていた。
もう剛から連絡くることはなくなり、学祭本番も3週間を切っていた。
さすがにもう剛も作品づくりに取り組んでいるだろう。
ほかのモデルを見つけたかもしれない。
わたしは暗くなったゼミ室で一人、2年生のとき剛が学祭で発表したアート写真集を眺めていた。
学祭2年目、まさかまたモデルとして呼んでくれるとは思っていなくて、わたしは舞い上がっていたのを覚えている。
全て白黒写真で統一されており、
わたしの顔が写った写真は一枚も発表されていない。
後ろ姿や、手や足だけ切り取られた写真集は、
当時誰がモデルなのかと、話題になって騒がれた。
「堂本剛には彼女がいる」と、ファンの子は泣きながらも、そのゴシップを楽しんでいるようだった。
発表された写真には顔が写っていないが、
わたしにだけ特別に顔が写ったものも入った写真集をプレゼントしてくれた。
わたしは2年前もらったプレゼントを1ページずつ噛みしめるようにめくる。
写真モデルというものを初めて経験したので、とても緊張したっけ。
わたしはいつも写真写りが悪くて、集合写真も目を瞑っていたり、想像以上に変な引きつった笑顔になってしまうので、カメラがとても苦手だった。
写真モデルをお願いされたときは、自身がなかったけど、出来上がりを見た時とてもびっくりした。
彼のつくる世界の中のわたしはまるで別人で、自分で言うのはなんだけど、とても綺麗だった。
わたしはその写真集のプレゼントがすごくすごく嬉しくって、たまに開いてはウットリしたりした。