第4章 ORIGINAL COLOR④
アヤメと別れて、4限の教室に向かっているとき、スマホが鳴った。
わたしの心臓は変な音でドキッと鳴った。
ポケットから取り出すと、堂本剛からだった。
「昨日はごめん。俺のせいで変なことに巻き込まれちゃって。」
わたしは言葉を選びながら
「大丈夫。堂本くんのせいじゃないよ。」
と送り返す。
するとすぐにまたピロンと音がなり、ラインを開くと、
「今日空いてる?また話し合いがしたいねんけど。」
と来た。
ついに断らなければいけないときが来てしまった。
わたしは苦しい気持ちを押し殺して
「本当にごめんなさい。実はこっちの卒論制作が結構切迫詰まってて、今年は協力できそうにないです。一度やると言っておいて本当にごめんね。」
一文字一文字タップする指の動きはとても重々しく、また涙が出てきそうになってしまう。
すると5分くらい間が空いて、またスマホが可愛らしい軽快な音でピロンと鳴った。
「そっか。無理言ってごめん。じゃあ話し合いは大丈夫やから、やること決まったら一日だけでも会えへんかな?」
会いたい。
会いたい。
会いたい。
わたしの胸の中は彼一色になっていた。
今すぐにでも雨の中走ってアート大の教室一つ一つ探して彼の元に会いに行きたい。
一日だけじゃなくて、もっといっぱい話したい。
毎年思う。
学祭が終わらなければ良いのにと。
そうすればいつまででも彼に会えるのに。
しかし、それすらも今年は許されなくなってしまった。
大学生活最後に残された彼との小さな思い出も、絶たれてしまった。
「ごめんなさい。就活とか卒論とかテストで今は頭がいっぱいだから他の人に頼んでもらってもいい?ごめんね。」
わたしは最後の切り札である、クドウタクヤと付き合っているということだけは、どうしても彼に使わなかった。
なんてわたしはズルいんだ。
これでもなお、彼に好かれたいと思ってる。
少しのチャンスにすがってる。
こんな酷いことを言っておいて。
もう無理だと分かっておきながら、、、。