第3章 ORIGINAL COLOR③
「とか言って結局女にチヤホヤされたいだけだろ。格好つけてんじゃねーよ。」
わたしは二人のやりとりをジッと眺め、なんだか複雑な気持ちになっていくのを感じた。
堂本くん。
ジャニーズに入るんだ。
わたし全然知らなかった。
いろんなことやりたいからそこの事務所を選んだって、たくさんたくさん考えて決めたんだろうな。
でももし、このやりとりがなかったらきっと卒業までずっとわたしは知らないままだったんだ。
きっと事務所に入ったらどんどんどんどん遠くに行っちゃって、きっと気づいたらわたしの手の届かないところに行っちゃうんだ。
事務所入りのことも
将来なにしたいとかも
なーんにも知らない。
わたしは堂本くんとってただのモデルであって、卒業したら赤の他人になってしまう。
この間ちょっと抱きしめられたくらいでこんなに浮かれちゃって恥ずかしいや。
堂本くんはわたしのことなんてきっとなんとも思っていないはずなのに。
「ご迷惑をおかけしてしまってごめんなさい。わたしこれからこの人のバンドの練習見に行く約束をしていただけなので。ご心配をおかけしました。すみません。」
わたしは他人行儀に剛にそう言ってお辞儀をし、タクヤを連れ出した。
剛は
「、、、え?」
と戸惑いの表情を見せたが、それ以上はなにも言ってこなかった。
止めようとしない彼の態度に余計悲しくなり、逃げるようにタクヤを連れ出し、その場を離れた。