第2章 ORIGINAL COLOR②
「俺こんなに小さい人間やったんや。なんか恥ずかしいわ。」
「え?」
剛はこちらを見ずに目を逸らしながらそう言った。
「ひろかさんのこと独占したいと思ってる。」
「え?」
心臓が大きく動くのがわかる。
独占したいだなんて。告白みたいなセリフ。
ドキドキしないはずがない。
わたしはなんて答えていいか分からなかった。
なるべく期待しないように抑えていたのに、これじゃあもっともっと好きになってしまうよ。
「高校の時初めて俺がひろかさんに声かけたときのこと覚えとる?」
「うん。」
もちろん忘れる訳がない。あれ以来他の女の子のように彼に夢中になってしまったんだから。
「ショパンの夜想曲第20番。なんて曲かあの後必死になって調べたんよ。」
「そうだったんだ。」
「なんか苦しそうな音やな。って思った。」
剛は懐かしむように昔を思い出すようにそういった。
「苦しそう?」
「うん。ほんまは弾きたいんやけど、苦しくて弾けないというか。葛藤してる音やった。」
「、、、、、。」
彼には全てお見通しのようだ。昔苦しんだ記憶がどんどん鮮明になっていくのが分かる。
「それに共感してしまったんや。俺もなんかの表現がしたくて。音楽でも絵でもなんでもええ。自分のこと表現したくていっぱいいっぱい勉強して、苦しい時期にひろかさんのピアノ聴いて、なんかこの音自分やなあ。って思った。」
「そうだったんだ。」
「大学一年になって。大学入れたんやけど、まだやっぱりずっと苦しくて、学祭の作品制作の時期に、ひろかさんのピアノ思い出したんや。あの時の気持ちを作品にしたいって思って、モデルをお願いして。」
今まで一度も聞いたことがなかった剛の気持ちをわたしは噛み締めながら耳を傾ける。
「そん時できたのがオリジナルカラー。ひろかさんのこと励ましたいって気持ちと、自分のこと励ましたいって気持ちでつくった。おせっかいやけど。」
当時聴いたあの衝撃的なライブを思い出す。
歌詞を思い出してなんだか泣きそうになった。