第29章 それぞれ
「お邪魔しまーす。」
「お邪魔します。初めまして。秋紀とお付き合いさせて頂いている黒尾エミリです。」
…黒尾……?
黒尾ってことは鉄朗の妹さん?
頭の中はグルグルと渦巻いていく。
いや、でも黒尾なんて苗字そうそういないし、髪の色も目の色も似てるし、鉄朗の妹の可能性は高そう。
鉄朗の顔を見てみると、目を見開いてずっと妹さんのことを見つめている。
…他の人もビックリしているようだ。
そんな静寂な時間を破ったのは、鉄朗の妹さんだった。
「突然来てしまい申し訳ありません。…えっと、多分みなさんの察しの通り、黒尾鉄朗の妹…です…。」
言いにくそうにそう言うと、鉄朗の顔を見て、気まずそうにはにかんだ。
「…色々話したいこととかすっげーあるけど、とりあえずみんな揃ったしテーブルんとこおいで」
妹さんは先ほどより気まずそうではないけど、鉄朗は結構気まずそう。
でも、それもしょうがないのか。鉄朗、気にしてたもんね、お母さんと妹を置いてきたこと。
これについて私が突っ込むところはなさそうだけど。
「ホットケーキパーティー!!早く食いてー!!!」
「…光太郎…あいかわらずだね」
エマさんは苦笑いしながらそう言う。
「そうだな。とりあえず、久しぶりに集まったんだし、騒ぐか!」
こうしてホットケーキパーティーが始まった。