第28章 1番最後。
「綾菜、こんなこと言って迷惑、なんて思ってんだろ?」
思うよ。だって、本当のことでしょ?
だから、小さく頷いた。…声に出したら、きっと震える声が聞こえちゃうと思って。
「やっぱ?(笑)
あのなぁ、そんなんで迷惑だなんて、俺が思うと思うか?」
「……わかんない…。」
鉄朗がどう思っているのか、正直わからない。
「多分、前にも言ったかもしんないけど、綾菜に迷惑かけられんの、俺、慣れてるからな?…んー、これだと誤解招く?」
「招くよ…。…嫌なら、嫌って言ってほしい」
やっぱり、鉄朗の考えていることは分かりそうにない。
「そっか。…俺さ、綾菜に迷惑かけられんの心地いいっつーの?なんて言うのかな…、嬉しい、って言うのかな?頼りにされてるのかな、とか、自分の弱い所俺に見せてくれるんだな、って思って、すっげー嬉しいの。」
「でも、今のは鉄朗を頼りにした、って言うか、私のただのワガママ、じゃない?」
「ワガママなんかじゃ、ねーよ。てか、ワガママだとしてもすっげー、嬉しいよ?だって、綾菜は俺から離れたくないってことだろ?俺、綾菜に求められちゃってんじゃね!?みたいな?」
いや、確かにその通りだけど、全部口に出されたら、恥ずかしいじゃんか…。
「顔真っ赤だネ、綾菜チャン。なにか恥ずかしいことでもアリマシタカ?」
「その言い方、ムカつく…」
暗闇の中2人で笑いあった。
この夜は特に交わるわけでもなく、かと言って、お互いに誘うことなく、夜が進んでいった。