第28章 1番最後。
2人、同じ布団に潜ると、鉄朗の声が横から聞こえてきた。
「綾菜、引っ越さないで、って言ってもいいんだよ?」
「…言わないよ。前も言ったけどさ、…鉄朗が決めたことだし、鉄朗のことは否定したくないもん。」
引越しの話された時に、1度言ったんだけどね。
まぁ、鉄朗のことだし、本当にそう思ってるか〜、みたいな確認、かな?
「───うそ」
カチ カチ カチ
と、時計の音だけが耳に入ってきた。
「なぁに、黙ってんだよ」
鉄朗のことを否定したくないと本当に思っているし、嘘じゃない。
だけど、引っ越さないで、と思っている自分もいる。
でも、そんなの自分勝手極まりない。
「ごめん、泣かせるつもりはなかった。…だけど、自分の気持ちを殺さないで。」
鉄朗が謝る必要は無いのに。
「鉄朗」
「ん?」
優しい声色。
こんなふうに聞き返されたら、何故かと次の言葉を言いにくい。
「……引っ越さないで……なんて、言ってもいいの?」
鉄朗は優しく私の頭を撫でながら言った。
「うん、いいよ。」
私の涙腺は、もう崩壊。
明日、目が腫れる、とか、みっともない、とかもう考えられない。
「行かないで…離れたく、…ない」
あーあ、自分勝手。
…なんて自己嫌悪、今はとても出来なかった。