第27章 甘くて苦い。
クロはそう言いながら、私に回していた腕を解いて帰る素振りを見せた。
「て、…鉄朗…、帰らないで」
私はそう言いながら、鉄朗を抱きしめる力を強める。
「いいよ。で、なに?俺とキスしたいの?」
クロは私の瞳を見つめてた。私も、それに応えるように鉄朗の瞳を見つめ返す。
「鉄朗と、キスしたい。」
「俺も綾菜とキスしたい」
その言葉の後、私の唇と鉄朗の唇の距離はゼロセンチになった。
「…あっ…」
鉄朗は貪るようにキスをする。
私もできるだけそれに応えようと、また抱きしめる力を少しだけ強くした。
舌を絡ませて、歯型をなぞって。
「…ん…っ…」
ここが外だとか、家の前だとか、そんなこと気にならないくらい頭を溶かされた。
「綾菜、エロすぎ」
「鉄朗もエロすぎ」
2人でそう言い合うと、クロは私の頭を撫でながら、言う。
「これからも、鉄朗って呼んで」
「うん、分かった」
最初からそういえば良かったのに…。そう思い、静かに笑った。