第27章 甘くて苦い。
「俺のこと見すぎだろ。離れられなくなる。」
クロはそう言いながら、私のことを抱きしめた。
…私は、突然のことすぎて何も出来ない。
だけど、私もクロに答えるように、ゆっくりとクロの背中に手を回した。
「なに、帰って欲しくないの?」
私は明日も普通に学校だし、研磨が、クロ最近すごく忙しそうにしてるよ、って言ってた。
だから、ここに留まらせているわけには行かない。
それなのに、帰って欲しくないの?って…。
「クロ、ずるい」
ぽつり、小さくつぶやく。
「なんで?」
真似をするように、クロもぽつりと小さくつぶやいた。
「クロ、これ以上ここにいたらダメでしょ。帰っていいんだよ」
この場の雰囲気に流されたら、絶対ダメだ。
「綾菜はそれでいいの?」
本当にずるいな…クロは。
「キス、したい。」
「誰と?」
クロから帰ってきた返事は、予想外だった。
「クロと」
それぐらい、クロだって分かるでしょ。なんて、思いながらもすぐに答えた。
「じゃー、キスしなーい。俺、鉄朗、な?」