第27章 甘くて苦い。
玄関を開けると、そこには男性が1人、立っていた。
「…クロ、どうしたの?」
玄関の前に立っている男性とは、クロのことだ。
私は疑問に思ったけど、クロは、当たり前、みたいな顔で一言私に言う。
「迎えに来た。夜遅いし、家の人心配すんだろ。立ったまんまじゃエマもドア閉めらんねーし、こっちおいで」
クロに呼ばれ、私は玄関を出ると、エマさんに、さようなら、と本日二度目の挨拶を告げて、クロの横に並んだ。
「久しぶりだなー」
「そうかな?1週間だけだよ、会えてないの」
でも、たしかに久しぶりかな?
期間としては、たったの1週間。
だけど、私はその1週間がとてつもなく長く感じた。
「まー、確かにな。でも、前までは毎日会ってただろ?」
「そうだね」
街灯と月明かりだけを頼りに、2人寄り添って私の家に向かった。