第27章 甘くて苦い。
「お邪魔します。」
「どうぞ。」
エマさんは笑顔でそう言うと、下駄箱の隣にある小さな引き出しから、モコモコのスリッパを出してくれた。
「寒いでしょ?これ使ってね」
「ありがとうございます」
そんな会話をしながら、キッチンへ向かう。
エマさんの家は、私の家から歩いて15分くらい。
ここら辺にはたくさん知り合いが住んでいるっていうことがわかった。
「綾菜ちゃんはテツロウに渡すのよね?」
「そうですけど…。」
…もしかして、バレンタインとか貰いたくないタイプ…だったり…。
「だよねー。テツロウは甘いの苦手だからなー…」
…確か、研磨もそんなこと言っていた気がする…。
クロは甘いの苦手ってこと、有名なの?
…まぁ、確かに、甘いのあんまり食べなそうな見た目だけども…。
「まぁ、なんとかなるよね!よぉし、綾菜ちゃん、作るよ!」
「はい、作りましょう」
こうして、エマさんと私の、バレンタインの試作品作りが始まった。