第27章 甘くて苦い。
「最近、テツロウとは仲良くいってる?」
2人で電車に乗っていると、突然声をかけられた。
…そういえば、最近クロとちゃんと会ったのって、一週間前ぐらいだな…。
「最近あまり会ってないので、どうでしょうね。あぁ、でも毎日連絡は取り合ってますよ?」
…あ、連絡、で思い出したけど、お母さんに遅れて帰るって伝えておかないと…。
「そっか。…あ、綾菜ちゃんさ、すっごく言い難いけど、聞きたいことがあるんだよね…いい?」
エマさんは少し不安気な顔で私のことを見つめていた。
…なんだろう…。
私は少し考えてみたけど、何も思い浮かばず、私は一言で言った。
「どうぞ」
すると、エマさんはやっぱり不安そうな顔で言う。
「コウタロウに、チョコ渡したいんだけど…大丈夫?…あ、嫌なら嫌って言ってね!全然大丈夫だから!」
なんだ、そんなことか…。
私は少し苦笑しながら、エマさんに言った。
「渡してあげてください。きっと、光太郎も喜びますよ」
私のお兄ちゃんだからって、気を使うことないのに。
「やった!ありがとう。」
この時のエマさんの気持ちに気づくのは、まだ先のこと。