第27章 甘くて苦い。
学校帰り、駅に向かって歩いていると、目の前に見覚えのある女性が見えた。
「あら、綾菜ちゃんじゃない。やっほー」
そう言い、片手に大きな荷物を抱えながら手を振って私の方に向かって歩いてくる女性は、いつも私に話しかけてくれるエマさんだ。
「お久しぶりです。あ、荷物持ちましょうか?」
「大丈夫だよー。綾菜ちゃんは学校帰りかぁ。今日は部活オフの日?」
「はい。」
私がそう言うと、エマさんは、あっ!、と何かが閃いたように、私の手を掴んで言った。
「私これからバレンタインの試作品作るんだけど、一緒に作らない?」
…ま、…まじか…。
私なんかが一緒に作ってもいいのだろうか…。
多分、足を引っ張るだけなんだけど…
「どう?どう?」
私が答えられないでいると、エマさんは私の顔を覗き、急かすように言っていた。
「エマさんが、よければ…是非お願いします。」
「はい、じゃあ、決定!ってことで、このまま私の家来てもらうことってできるかな?」
「全然大丈夫です」
「材料は多めに買ったし、綾菜ちゃんの分もあるから、心配しないでね?」
後でちゃんとお金を返そう…。そう思いながら、エマさんの隣を一緒に歩いた。