第8章 決意
コナンと葵は同じ場所にいるとみてまず間違いない。corpseというからにはその冷蔵車には死体が積まれているのだろう。そこまで考えたとき、伊豆で見た怯えて縋るような葵の瞳が頭を過った。
また一つあの小さな肩に散った命が乗り上げたのだと止まりかけた足で強く地を蹴った。
幸いナンバーは分かっているし後は運送会社に連絡して場所を聞き出すだけだと車に戻り乗り込んだ所で携帯が短く震える。
エンジンを掛け、シートベルトを締めながら開くとそれは先程のカップルの女の方からで冷蔵車の現在地が記されている。仕事が早いなと手間が省けた事に緩く口角を上げ、さっと目を通し削除した後アクセルを踏み込んだ。
夕方に限定ケーキが届くのだと頬を染めて楽しそうに話す葵を思い出し、次の配達先を阿笠邸に絞り込んでハンドルを切った。
暫く走らせ目当ての家を視界に入れるとその前に一台のトラックが停まっている。前に立つ男の足で見えにくいが、一瞬晒されたナンバーにビンゴと口が動いた。
あの中に葵がいる。
男二人を見据える降谷の細められた瞳から温度が消えた。
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