第8章 決意
突然現れた安室の視界から子供達を隠す為扉を閉めようとする犯人に必死に抵抗する元太の小さく唸る声にハッと我に帰った。
安心から力の抜けかけていた体を叱咤して劣勢状態の扉を渾身の力を込めて押し返す。びくともしないそれにギリッと奥歯を噛み締め更に力を込めた。こんなことで状況が変わる筈もないことはわかっていたけれど、安室が制圧するまでの時間であっても元太だけに6人の命運を背負わせたくなかった。
安室の姿を、声を感知してはいけない。まだ安心してはいけない。それだけを繰り返し無心で耳と目が拾う全てを遮断してただ冷たい鉄の塊を前に、思い切り押しては休みを繰り返していると、知らぬうちに軽くなっていた扉が葵の力で思い切り開かれた。
それに踏ん張ることも出来ずに投げ出され目を開くと、一人は倒れ一人は座り込み気絶している。
ああ、だからこんな簡単に……と悠長なことを考えていると後ろから歩美と元太の切羽詰まった声が聞こえてきた。
このままでは頭からアスファルトへ落ちてしまう。どうにか怪我を最小で抑えようと手で頭を押さえ体を丸めると"コナンくん!後を頼んだ!"と聞こえた後アスファルトより柔らかい、けれど硬い何かに包まれた。
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