第8章 決意
暗さに少し慣れてきた頃、コソコソと隠れる動きをし出した人物を注視してギョッと目を剥き、流れるように手を取り荷物の裏へ押しやると顔を寄せる。
『解けちゃったの?!』
「ええ、引っ掛かって全部解けちゃったみたい…」
恥ずかしさと寒さに頬を染める灰原に頭を抱えている間にコナンによって無慈悲にもその姿が照らされてしまい、咄嗟に隠そうと前に出る。
『コナン君!照らしちゃダメだよ!』
「あ、悪い…」
「ふんっ!」
この姿で出ていけるわけもなく、ガコッと扉の開く音に全員で奥に身を隠す。じっと息を潜めていると宅配業者二人が不穏な会話を始めた。
大事な証人に出せるわけない声…。
何やら犯罪臭い言葉に鋭くなる視線を誤魔化すように落とし、腰丈のピーコートを摘まむ。
葵の身長は灰原の鼻辺りまでしかない為、どうやっても彼女がこれを着ることは不可能だ。
精々未開封のカイロを渡すことしか出来ない自分に溜め息が出てしまう。
上着を借りた灰原は大尉で暖を取っているので、葵のカイロはTシャツ一枚の光彦へ渡った。
「次に業者の人が扉を開けたら外に出してもらいましょう!」
「いや、そいつは止めといた方がいい…」
「え?」
『コナン君?』
「どうやら俺達の前にもうお客さんが乗ってたようだぜ」
箱を覗き込んでいたコナンの言葉で灰原が葵の腕を引くと見事な連携で探偵団が壁を作り、箱を覗いている。これには腕を引いた彼女も驚いたらしく瞬いているが、一番驚き、動揺しているのは間違いなく葵だった。
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