第8章 決意
記憶について話した事などない…。遺体を見つけ自分達も怖いだろうに、それでも葵を守ろうと箱の前から動かない…。
そんな彼らの強い心に何時までも記憶を恐れている自分が情けなくて、不甲斐なくて…どうしようもなく腹が立った。
『(何してるんだ私?!周りに甘えて…こんな小さな子達を盾にして!…この能力を最大限に利用して活用して皆を守らないでどうする!あの人を守らないでどうするの!!)』
ハァーっと大きく息を吐き、キッと前を見据える。訝しむ灰原と目を合わせるとそっと腕を掴む手に触れた。
『ありがとう哀ちゃん!もう大丈夫』
「大丈夫って…。まさか見る気?!」
声を上げる彼女に4人が振り返る。コナンは眉を寄せ此方へ歩を進めた。
「どうした?灰原」
「葵ちゃんが死体見るって言い出して…」
「急にどうしたんだよ…」
『逃げたくない…』
「え?」
『わたしも…強くなりたい!!』
その力強い声に、瞳にコナンが徐に口角を上げた。
「わかった」
「江戸川くん!」
「葵は自分の運命と向き合おうとしてんだ…」
「っ!」
「逃げたくねーんだよな?」
『うん!』
「っ…わかったわ」
ゆっくりと離された手に礼を言って箱に近づきそっと中を覗くと、目を見開いた男の遺体がそこにあった。
意外な程冷静な自分に驚きつつ全体を視界に入れていく。
一通り見終わり振り向くと、不安に揺れる3人の顔が目に入った。
『大丈夫!皆がいるから…全然怖くないよ!』
「ホント?よかったぁ!」
頷くコナンのおかげもあるのだろう。パッと不安が消えた探偵団に一つ安堵を漏らし仕方ないと肩を竦める彼女へ微笑んだ。
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