第7章 伊豆へ!
ふと感じる心地好い振動に薄ぼんやりと目を開けた。
流れる風景。前を走る車。爽やかな香りの満ちる空間。再び眠りへ誘うかの様なクラシック。
緩慢な動きで数回瞬き、どうやら車内にいるようだと脳が現状を把握する中、隣から柔らかい低音が届く。
「おはよう」
『…おはよう』
「体は大丈夫かい?変な所はない?」
『…うん、平気。…透くん事件は?』
「終わったよ。毛利先生のおかげでね」
にこりと笑う安室がそれ以上事件について話す事はなく、話題は最近流行りのスイーツへ移る。
被せた蓋が開くことのないようにと気遣うその気持ちに自然と笑みが溢れた。
葵を横目に同じく目を弓なりにしならせた安室は、徐にハンドルから片手を離し此方へ伸ばす。頭へと伸ばされたそれは巻かれた包帯をなぞりゆっくりと頬を滑っていく。
「コナン君たちが後でメールするって言ってたよ」
『じゃあ、ありがとうって言わなくちゃ!』
「そうだね」
『透くんもありがとう!』
「どういたしまして」
ちらりと此方へ向けられた蒼に宿る確かな安堵と僅かな後悔に心の内で謝罪を呟きそっと目を閉じた。
伊豆へ!Fin.