第7章 伊豆へ!
『(あっつい…)』
茹だるような暑さと物音で目を覚ます。どうやら冷房が切られてしまったようだ。
寝る前に水分を取らなかったせいか、早くも重い体に溜め息を吐き物音の原因を探ろうとベッドから下りる。
視界ギリギリに捉えたものにビクリと体が震えた。
『ぁ…』
縺れる足を叱咤し頸動脈に手を当てるが、その鼓動が触れることはなく開かれた濁る瞳に汗が吹き出し息が上がる。
『(落ち着け……落ち着け!)』
彼なら…、安室なら、コナンなら、きっとこうするだろうと遺体周りや室内を確認して冷静を必死に繋ぎ止める。
ぐるぐると回る視界や体を襲う倦怠感に気を取られ、ガチャリとドアが開くまで外に人がいることにも気が付けなかった。
『開けないで!!』
咄嗟に出た声は自分でも驚く程大きく、訝しげにする安室とコナンだがその顔は次第に驚愕に染まっていく。
『石栗さんが…死んでるの』
握り込んだ指先は冷たいのに顔はひどく熱を持っていて、見上げた蒼が滲んだ。
□
「蘭!救急車と警察に連絡だ!」
「う、うん!」
ざわつく周囲の声を気にすることなく肩で息をする葵を注意深く観察する。髪が張り付く程汗をかき、足下も少しふらついている。開いた隙間から手を入れると途端に伝わるじとりとした不快感に眉を顰めた。
「この家梯子はありますか?」
「それなら下の物置の中に…」
「お、おい!警察が来るまで現場は保存しとくのが基本なんじゃねーのか!」
「そんなに待ってられないよ!」
「ええ。一刻も早く彼女を連れ出すべきです。精神的にも…肉体的にもね」
物置から梯子を出し玄関ポーチに上がると窓を数回叩く。覚束ない足取りで鍵を開けた葵を透かさず抱き上げポーチから飛び降りると、入れ替わるようにコナンが室内へと入る。
荒い息を繰り返す葵を連れリビングに入ると蘭と園子が待ち構えていた。
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