第7章 伊豆へ!
ズキン、ズキンと頭の響く痛みに目を覚ました葵の視界に飛び込んできたのは眉を寄せた安室の姿だった。
「気が付いたんだね」
「先生!お願いします!」
「ただの脳震盪でしょう。でも念の為に手足が痺れたり、吐き気や目眩がしたら大きな病院で検査してくださいね」
「はい」
痛む頭を押さえつつ医師の質問に答え診察を終え、無意識に辺りを見渡すと隣にいた園子の服を引いた。
『…園子ちゃん、ここどこ?』
「ここはあんたにラケットをぶつけた…」
「うちの別荘よ!」
腰を屈め、不機嫌そうにする園子の言葉を引き継いだ彼女があのラケットの持ち主らしい。
ボールは顔面でキャッチしたが、まさかラケットまでするとは思ってもいなかった。
「ごめんね…。汗で手が滑っちゃって…」
「だから言ったのよ!グリップテープをちゃんと巻いておきなさいって!」
「けど残念だよなぁ…。俺の携帯の電池が切れてなかったらムービーで撮ってネットにアップしてたのに…。"少女を襲う殺人サーブならぬ…殺人ラケット"ってな」
「子供が怪我したっていうのに何言ってんだお前!」
「冗談だよ。俺はこの重い空気を和ませようと…」
何とも訳ありな彼らだが、話を聞いていると此処へは亡くなった友人の誕生日を祝うためにやって来たらしい。怒りに任せ掴み掛からんとする高梨を同じメンバーの桃園と梅島が宥めると、見られている気まずさもあったのかその場は収まった。
「皆さん俺らと団体戦やりません?」
「俺は構わねーが…」
「でも、誰か葵ちゃんに付いてた方が…」
ボーッとする葵を見つめる蘭に安室が口を開く前に"ねぇ!"と耳に入った高い声に顔を向けると、コナンが腹に手を当てながら各々を見渡している。
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