第7章 伊豆へ!
ぽん、ぽんと優しく飛んでくるボールを必死で追いかけるが、嘲笑うかの如く逃げる黄色に頬を膨らます葵の後ろで安室の肩が震える。
空振りや顔面キャッチばかりが上達していくのを見兼ねてか"葵ちゃん"と声が掛かった。
「大丈夫かい?顔見せて」
苦笑しながら膝をつき、膨れたままの両頬を包み込んだ安室は傷がないか確認した後口元を緩める。
「うん、大丈夫みたいだ。でも、今日は此処までにしようか」
『…透くん』
「ん?」
『透くんの速いボールが見たい』
「あはは!いいよ。ただし、危ないからそこを動かないこと!」
笑みを浮かべ離れていく姿を指示通り動かず目で追っていると、パゴッという音と共に綺麗なフォームで放たれたボールは、気付けばフェンスに当たり止まっていた。
『コナン君…?』
その近くで驚愕に目を見開き立ち竦んでいるコナンを視界にいれ声を掛けるも、思考に沈んでいるのか聞こえていないようだった。
「すっごーい安室さん!」
「ナダルみたい♡」
「いやぁ、中学の時以来ですからお恥ずかしい!」
胡散臭い笑顔の安室に近づきつつ、そういえば誰かと話す安室透をじっくり見るのは初めてかもしれないと考えていると、ふと影がかかった。
「葵ちゃん、久し振り!」
「ミステリートレイン以来ね!」
『蘭ちゃん、園子ちゃんも!こんにちは。おじさんもこんにちは!』
「よお。元気だったか?」
『うん!』
ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜられていると突然ぐいっと強く引かれ険しさと怯えを宿した青と目が合い、そのまま輪から外れる様に進むコナンに付いていく。
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