第6章 日常…?
葵が持つ情報は危険すぎる。
扱いには細心の注意を払わなければならないが、それを知る者も最小限に抑えた方がいい。
彼が気掛かりだったが、伝える気はないと聞いて眉を開いた。
証人保護プログラムはジェイムズの奮闘虚しく保留となったが、彼処まで強い目で守りたい人がいると言われてしまえば二の句が継げないのも頷ける。
恐らく葵が守りたいのは安室透だろう。
彼の何を知っているのかは知らないが、あの男が生きる為なら自分を殺すことも厭わないと言わんばかりの笑顔に気付けば手が伸びていた。
彼女は自己評価が低すぎるせいか、魅せられた人間の多さに気付いていないらしい。
困ったものだと呆れつつ、取り敢えずその心が壊れることがないように適度に連絡をしようと決め、手を離した。
「赤井くん」
「はい」
「君の言う通り、彼女の笑顔は素敵だったな」
「ふ、彼女は5歳でも27歳でも笑顔は変わらないようです。性格は大分違いますが」
「ははは。一度に二人も妹が出来るとは羨ましい限りだ。……葵くんは君に任せてもいいかね?彼女を知る人間は少ない方がいい」
朗らかに笑んでいたジェイムズがそれを消し、鋭いその双眸が赤井を射ぬいた。
─守ってやるさ。君の白は心地がいい。
いつかの月に誓った言葉を思い出し、自然と口角があがった。
「ええ。勿論」
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