第6章 日常…?
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公園まででいいという葵を送り届け、すぐにジェイムズの待つ駐車場へ戻る。
人目がないことを確認して後部座席に乗り込むと、運転席にいた筈の上司は後部シートに体を預けており、ひらりと手をあげた。
「今日は流石に疲れたな」
「そうですね。あんな体験をするとは思いませんでした」
公園で撮った彼女の異常な行動に一瞬志保と同じように縮んだ人間の可能性が頭をよぎる。
だが彼女は確かに5年前、杯戸中央病院で生まれている。"葵"という名前は、当時彼女の母親を担当した看護師がつけたものらしく裏も取れていた。
それだけに、口調や顔つきが大人びたものに変わったときは純粋に驚き、更に使い慣れていることを訝しんだ。
聞き始めは取るに足らないと流していたが、葵の澄んだ瞳とこの世界の情報というものが気になり、終わりには自分達が納得出来るほどのものならば信じてもいいとすら考えていたが、まさかメール内容を答えるとは予想だにしていなかった。
p.sまでは一字一句違いなく、生まれてこのかたネット環境のない部屋から出たことがない彼女が知り得る筈のない情報に、息が止まると同時に肝が冷えた。
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