第6章 日常…?
儚げに微笑む葵に赤井は徐に手を伸ばし、その掌で頬をつねった。
『いっ!?』
「君はもう少し自分の価値を知るべきだ。告げないことに異論はないが、それで君が壊れては元も子もないだろう」
『なんれふか、ひゅうに』
「俺はこれでも君を気に入っているんでね。27である君と友人になりたいんだが?」
『!』
その言葉に目頭が熱くなるのを感じ慌てて下を向く。
『っそこまでいうなら、特別ですよ!』
「ふ、素直じゃないな君は」
『うるさいですよ!』
小さく笑う声に噛みついた葵の笑顔は涙で濡れていたが、普段より大分大人びていた。
ハンカチで涙を拭き、気合いを入れるように短く息を吐くと面白そうに見る赤井、微笑ましそうに見るジェイムズ、それぞれに向き直る。
『お目汚しを失礼しました』
「いや、構わんよ」
「ああ、構わない。君の泣き顔を見るのは初めてではないからな」
にやりと意地悪く口角をあげる赤井に、そうだったと赤くなった顔を隠すように頭を抱えた。
『そんなことより!対価の話です!』
「ああ、それなら情報で十分に足りるよ」
『…そうですか?』
「君には沖矢の正体と俺の居場所を黙っていてもらいたいからな。俺と君の話したくないことを引いた残りの対価が情報ということだ」
何となく丸め込まれた気もするが、取り敢えずはそれで納得した。
「全てが終わったその時は、いい家族を見つけてやる。それまでよろしく頼むよ。葵」
『此方こそよろしくお願いします。赤井さん、ジェイムズさん』
二人と握手をして、スバル360が止めてある地下駐車場に戻るとジェイムズと別れ、プレゼントを買ってから家へ帰った。
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