第6章 日常…?
「……」
『判断は貴方に委ねますが、そんな顔をするなら嫌だと言ってください』
「…いや、構わない。続けてくれ」
『……せめて文字に起こします』
携帯を手に、耳にたこが出来る程聞かされた文字を打ち込んでいく。
p.sの下には"ここから先は貴方にしかわかりません"と書き、携帯ごと赤井に渡した。
視線を携帯に落とした彼は読み終わると深く息を吐き、首元を弄ると顔を上げた。
「どうだね?」
「一字一句間違いありません」
「そうか。葵くん、私は信じよう」
「俺も信じよう。この言葉を知っているのは俺と明美しかいないからな」
『…そうですか。赤井さん。怒って、いえ殴っても構いません。それだけのことをした自覚もあります』
「君はただ俺の言葉に応えただけだろう。確かに触れるには少々痛すぎる傷だが、精一杯配慮してもらったお陰でそこまで深くない。それで十分だ」
変わった声に驚くも、くしゃりと頭を撫でる熱に安堵し徐に目を細めた葵に二人も小さく笑みを浮かべる。
何処と無く張り詰めていた空気が緩やかになった所でジェイムズが背筋を直した。
「葵くん。これからのことなんたが」
『はい』
「証人保護プログラムを受ける気はないかい?」
先程とは変わり憂いを含んだ表情で此方を見る二人に静かに首を横に振る。
『お断りさせていただきます』
「何故だね?君自身その位置がどれ程危険かわかっているだろう」
『勿論、承知しています。ですが、私には守りたい人がいます。此処でなければ意味がありません』
「…そうか。一つ聞くが、君の周りを彷徨いている者は?」
『彼らは白です。身分も知っていますので危害はないかと』
"ただし、今回の事で昴さんは目を付けられたかもしれません"と付け加えると"それは怖いな"と肩を竦めてみせた
.