第6章 日常…?
此処まで気付かせないとは優秀だなFBI……なんて随分外れた感想を抱き、既に意味のない言い訳や誤魔化しを全て捨てた。
沈んでいた思考を頭ごと上げ、葵の行動を余すことなく見ていた二人に向き直り姿勢を正した。
『これはとても非科学的な事で、到底信じられるものではありません。それでも聞かれますか?』
がらりと口調が変わった葵に一瞬の目配せの後"ええ、勿論"と沖矢に話を促され、自分には前世と呼ばれる記憶があること。公安警察に所属し27で命を落としたこと。そして、この世界の情報を少し知っていることを話した。
話はじめて暫くは苦々しい顔をしていた二人だったが、この世界の情報と言ったところで再び視線を合わせ頷くと、その後は無表情で聞いていた。
『…以上になります』
「ふむ、確かに易々と信じられる話ではない。が、何か我々が信じるに値する情報はあるかね?」
『証拠ですね…。沖矢昴が赤井秀一の隠れ蓑であること、灰原哀が宮野志保、シェリーと呼ばれ組織でアポトキシン4869を開発していた…ではいけませんか?』
「それだけならばまだ調べられる範疇ですよ。君が以前から知っていたという証明にはなり得ません」
相変わらず腕を組みながら言う彼に信じてもらうには、やはりあの傷に触れる他ないのだろうか。
『これ以上は貴方の傷を抉ることしかできません』
ふと、その細い瞳が葵を捕らえる。どうぞと手で先を促され、ぐっと足の上で強く拳を握る。
今から彼の瘡蓋を剥がさなければならない。
『宮野明美さん』
「っ!」
『から届いた最後のメールの内容をここで話すことになります』
息を呑み開かれた彼の緑は悲痛を叫んでいて、そうさせたのは自分なのに胸が痛んだ。
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