第6章 日常…?
「すみません。公園に着いてからの貴方の行動は全て見させてもらいました」
放たれた言葉の衝撃に固まっていると、沖矢が腕を伸ばす。
それを辿っていくとジェイムズが此方にネクタイピンを向けていて、成る程それがカメラかと納得した。
そういえば東屋の向かいのベンチに彼が座っていたことを思い出す。
「昨日の電話での貴方の声がやけに必死だったことに疑問を抱きまして。何か事件にでも巻き込まれたのではとFBIの友人に警護を頼んだのですが、目を引かれたのは5歳とは思えないその異常な行動です。取り敢えず、ポケットのものを出してもらえますか?」
一部始終見られていたのなら下手な誤魔化しは恐らく通用しない。目先の事に囚われすぎて周りの警戒を怠った自分を殴ってやりたくなった。
「ほー、リボンとソーイングセットですか。それで、これにはどんな仕掛けがあるんですか?」
興味深く観察している二人にはもうわかっているだろうにと、一つ溜め息を吐き、針で指を刺す。
ぷっくりと存在する赤をリボンの端に染み込ませると、途端に浮かび上がる"たすけて"の文字に二人は口角を上げた。
「やはり私にはどうしても君が5歳であることが信じられない」
「同感です。このような仕掛けやあの行動はとても5歳の子供に出来るものではありません」
「君は何者ですか?」
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