第6章 日常…?
『昴さーん!こっちだよー!』
視界に捕らえた沖矢に向かってブンブンと大きく手を振る。
段々とはっきりと見えてくるその表情は見慣れない無表情だった。
「こんにちは、葵ちゃん。彼処に車を止めてあるので行きましょうか」
先程のが見間違いと思える程完璧な笑みを浮かべる沖矢に手を引かれ、彼の車だというスバル360に乗り込んだ。
走り出した車に揺られぼーっと彼を見ていると、ミラーを確認した沖矢は信号が黄色に変わった瞬間右折をした。
後続は来ていない。
そのまま入り組んだ道を進み、何処かの地下駐車場で停止した。
目的が分からず目を白黒させている間に助手席のドアが開き、シートベルトが外されるとまた手を引かれ、今度は黒いバンに乗せられる。
既に運転席には老人が座っており、葵の隣に沖矢が座るのを確認するとゆっくりと発進し、次に止まったのは先程とは違う地下駐車場。
恐ろしい程の沈黙を破ったのは此方を振り返った老人だった。
「いきなりで申し訳ない。私はこういう者でね。彼とは昔からの友人なんだ」
そう言って提示されたのはFBIの身分証で明記されていた名はジェイムズ・ブラック。
どういう事だと沖矢を見上げると、腕を組み無表情のまま此方を見ていた。
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