第6章 日常…?
「これが何かわかるかな?」
周りを気にしつつ出されたのは警察手帳だった。
風見裕也。これが彼の名前らしい。
所属は警察庁警備局警備企画課。偽造には見えないし、一先ず警戒は緩める。
『お巡りさん?』
「ああ、風見裕也と読むんだ」
『わたし悪いことしてないよ…?』
「ああいや、違うんだ。ある人に葵ちゃんが危ないかも知れないと言われて守っていたんだが、君は記憶がいいと聞いていたから、自分の周りに何度も同じ人間がいたら不安になってしまうんじゃないかと思って、こうして身分を明かしているんだ」
『わたし危ないの?』
「…そうだな。君が見たものを忘れないと知られることはとても危ないことだ」
『じゃ、じゃあもう絶対言わない!』
「その方がいい」
ばっと両手で口を抑えると、力強く頷かれた。
真面目に話す風見の目に曇りはない。それに、さっきの言葉でこの人が公安だと確信することができた。
葵の能力を知っていて、且つ狙われる可能性を知っているのは安室だけだから。
「ただ、俺が警察官だということは誰にも言わないでほしい」
先程と同じ強い瞳に、勿論ですとも!と頷きそうになる頭を慌てて傾ける。
『お巡りさんって格好いいのに言っちゃいけないの?』
「他の人に知られたら警察をクビになるんだ」
『え!?…わかった。あの、透くんにも秘密?』
「透くん?」
『わたしの家族!安室透っていって探偵なの。格好よくて、頭がよくて、何でも出来る凄い人なんだよ!』
安室について興奮気味に語っていたことに気付いて、頬に集まる熱を両手で隠しながら風見を見ると、彼は至極嬉しそうに目を細めていた。
「そうか。なら、特別にその人にだけは話してもいいことにしよう。ただ、会って話すことは出来ない。連絡先も教えないと約束してくれ」
『約束する!ありがとう!』
「こちらこそ。これからも葵ちゃんの近くにはいつも人がいると思う。前の日に目印をメールするから、それを付けているのは仲間だ。付けていない人が近くにいたら直ぐに連絡してくれないか?」
『うん!わかった』
頭を撫でられて、この話は終了した。残りは風見が聞きたいと言うので葵の安室自慢で終わった。
終始嬉しそうに笑う彼の全身が、降谷を尊敬してると語るのでつい熱が入ってしまった。
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