第6章 日常…?
フォーマルな出で立ちで葵の視界に入った男が、約20分後にカジュアルな服装で再び現れる。
少し記憶力に自信のある人間ならば首を傾げるようなことを、組織や公安の人間が意図せずするとは思えない。
葵の能力を知った上で、接触を図る為の布石と考えた方が頷ける。
仮定や推測だとしても、接触すれば裏付けはとれてしまうのだから警戒し過ぎるぐらいの方がいいだろう。
そして、葵の出掛ける先は米花公園しかないので、男が来るのも恐らくそこだ。
この体では心許ないけれど、あの男が現れ次第此方から接触を図ろう。
とはいっても何も考えずに行くほど馬鹿でもないので、色々と策を講じる。
まず、行くのは親子連れが多い休日の土曜日。
更に見晴らしのいい場所にいれば、何かあったとしても誰かしらの目に触れることが出来る。
そして、男が組織の人間だった場合、安室も降谷も表立って動けない可能性があるので、済まないと思いつつ沖矢に連絡を取った。
元々そのつもりで貯めていたお小遣いで"安室に贈り物をしたい"と切り出すと、"僕で良ければお付き合いしますよ"と二つ返事で引き受けてくれたことに感謝して、土曜日の13時に米花公園の東屋で落ち合う約束を取り付けた。
これで最悪連れ去られたとしても、葵が何かしらヒントを残せば、切れ者だという彼ならば気付いてくれるだろう。
忘れていた。来ていく服も大事だ。
なるべく人の印象に残る服がいいので、シャツとパンツとスニーカー、全てを白で纏めよう。序でに髪を縛って白いリボンもつけよう。
部屋の引き出しから出した服をハンガーに掛け、クローゼットにしまうとまたリビングに戻る。
取り敢えず、この体で出来ることはやったと思う。
あとは決戦の日を待つのみ。
公安の可能性は、今は捨てておこう。
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